JR北海道に渡った”幻の581系”(サハネ581形)
2017年4月8日、ほぼ半世紀にわたって活躍した世界初昼行夜行兼用583系特急型寝台電車の”さようなら”運転からおよそ1カ月。
最後の生き残りであったJR東日本秋田支社所属のN1N2編成の引退により、583系は廃形式となります。
さて、本日は北は青森から南は西鹿児島まで、文字通り”日本全国津々浦々”、電化されている路線すべてを走ることのできた583系(581系)にあって、それまで足を踏み入れることのなかった北海道へと渡りつつ、一度も営業運転されることなく廃車となった幻の”サハネ581″のお話。
JR北海道に7両継承、サハネ581形
1987年の国鉄分割民営化を控えた1986年ダイヤ改正では、青森運転所に所属していた581・583系のうち中間付随車であるサハネ581形が7両札幌運転所へと転出しました。
国鉄時代、南福岡電車区(のちに向日町運転所に配置)・青森運転所に所属した同系列ですが、それまで青森~西鹿児島を運用の範囲としていた経緯からは、札幌への転出は意外ともいえます。
また、札幌運転所に転出した車両は、581・583系単体で運転できる”編成単位”の移動ではなく、中間車の、さらに付随車のみの7両ですから、これは581・583系電車としての運用を念頭に置かない、何らかの車両へと改造することを目的としたものだったのでしょう。
結局、国鉄当時、JRの区分で言う東日本地区・東海地区・西日本地区・九州地区で活躍した581・583系は、国鉄分割民営化により、JR東日本・JR西日本、そして一度も運行した実績のないJR北海道の3社へと継承されています。
こののち、JR北海道では種車の経年劣化が著しかったことや、改造計画の見直しを実施するに至り結局営業運転には復帰することなく、廃車されてしまいました。
かろうじて台車のみ流用
7両ともすべて廃車となったJR北海道所属、7両の”幻のサハネ581形”。
残念な結果に終わったとはいえ、この後、台車のみがキハ183系”クリスタルエクスプレス トマム & サホロ号”用・キサロハ182-5101に流用されており、現在も活躍を続けています。
581系・583系電車概略
動力分散式の昼夜兼用特急型電車として、直流・交流60Hz対応の581系が1967年。直流・交流50/60Hz対応の583系が1968年に登場。
世界的に見ても本系列の最大の特徴である”本格的な寝台電車”の出現は、581系・583系が世界初となります。
581・583系の登場は、当時の日本の鉄道が抱える諸問題に対して、その打開策を得るべく開発されます。
1960年代になると、昼行列車においては加速・減速に優れ、上り勾配でも高速化の期待できる電車および気動車による”動力分散方式”を広く採用するようになりました。
これは、日本の抱える鉄道事情によるものが大きいのですが、島国である我が国は地形が複雑で、こう配・曲線の多用されている路線を走行するには、動力を集中式にするよりもそれぞれの車両の床下に機器類を”分散”させることでより大きな動力が得られるから、だったのです。
その一方で、夜行列車については夜間走行時の静粛性が求められる点から動力の分散方式は採用されず、在来方式の機関車による客車けん引、”動力集中方式”が未だに主流でした。
しかし、これが夜行列車を総じて、高速化の妨げ・車両運用の非効率に繋がっていたわけです。
また、当時好景気による輸送需要の拡大に対して、優等列車の増発は容量のひっ迫する車両基地のキャパシティを越えるようになり、いくつかの機能や運用用途を集約した高効率な車両の開発へと目が向けられました。
これら、「動力の分散化」による高速化の実現で長距離列車の増発、「昼夜兼用」車輌とすることで、昼も夜も運行可能な車両とし、待機時間・待機場所の削減を実現するための要素を兼ね備えて登場したのでした。
昼間は座席、夜間は寝台へと変化できる仕組みは、車両運用の効率化に大きく貢献しました。
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