鉄道車両を構成する部品を語るうえで、その外見的印象を大きく左右する部品の一つに「Hゴム」が挙げられましょう。

昭和30年～50年代に製造された車両の多くに見られた、Hゴムによる開閉しない”はめ込み窓”。

今日は、昭和の国鉄、私鉄問わず、幅広く用いられたHゴムの”色”について、お話ししたいと思います。

Hゴムは固定窓に最適な部品

鉄道車両には、前面窓や側窓、乗降扉用の窓など、複数種類の”窓”が存在します。

これらは大別して開閉できるか、できないかに大きく2分類でき、一方は、アルミサッシュを用いるなどにより上下左右に開閉できるような仕掛けとなっていて、もう一方の”開閉できない窓”は、雨漏りや腐食を防ぐために車体鋼板側と窓ガラスを、Hゴムのへこんでいる側に食い込ませて密着させたうえで「嵌め込む」、はめ込み式に分類できます。

この際に用いる”Hゴム”が、そう呼ばれる所以は、ゴムの断面を見たときに”H”型に見えるからです。

黒Hゴムに交換されると・・・

Hゴムは、昭和30年代から50年代にかけて製造された鉄道車両の、はめ込み窓に幅広く採用されてきた”縁の下の力持ち的”存在の部品でした。

近年製造されている新型車両にあっては、見た目もすっきりとした新しい技術を用いたはめ込み窓へと世代交代しており、Hゴムの活躍する場面は急速に減りつつあろうかと思います。

それはHゴムを構成するゴム自体が、経年により劣化をきたしてしまうことにあり、メンテナンスをより簡素化するためにも、鉄道車両における部品にHゴムを用いることは、時代的役割を果たし終えたといえるものでしょう。

柔軟なゴム製品は長年外気にさらされたり、太陽光を浴びることで日に日に痩せてしまい、本来の性能を果たせなくなることで寿命・交換の時期を迎えることとなります。

ゴム製品に交換を必要とするような”劣化”は付き物ですので仕方のないことですが、それらに代わって出現したのは対候性・耐久性に優れるとされた黒Hゴムでした。

それまでの一般的なHゴムは、”白ゴム”と呼ばれ、薄ら灰色がかった色合いのゴムでしたが、対候性に優れるという黒ゴムは、ゴム内部に光を通さないために劣化しにくいというもので、長寿命で製品としての効果を長く発揮できること、メンテナンスフリーなどの観点で優良です。

性能や保守の面において優れた黒ゴムですから、それこそ称賛されるべきものと言えるのですが、この黒ゴム、「黒色」というのが外見の印象を大きく変えてしまうこととなるのでした。

それまでの白ゴムを採用していた車両は、窓枠の縁をさりげなく飾っている一種の”装飾”だったのですが、これが一変、”黒”となってしまうと、アクの強い色合いが窓枠を強調してしまって、なんとも車両の印象すらも変えてしまうものなのです。

女性のお化粧に例えてみるならば、「アイラインの濃すぎる化粧」と評せましょう。（こりゃ失敬。）

本日掲載したキハ40系のイラストは、オリジナルの白Hゴム車と黒Hゴム交換車両を並べた図です。

白Hゴムは国鉄型車両のオリジナルな印象を感じ、黒Hゴムの方はJR時代にメンテナンスのくわえられた車両の印象。若々しさを感じますね。

車両によって、大きく印象を変えてしまうHゴムの以外に大きな”存在感”。

やはり鉄道車両の印象と言うのは、細かなディテールの集合体であることを改めて感じました。

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